不景気がSaaSにもたらす解約の増加
景気は浮き沈みのある波のようなもので近いうちに不景気が訪れたとしても何ら不思議ではありません。いつか訪れる不景気にSaaS事業者どのように備えればよいのでしょうか。ヒントは過去にあります。2008-2009年の不景気時にクラウド契約管理SaaSを提供するEchoSign(現Adobe Sign)は以下のような状況が発生していました。
- 景気が後退するにつれ、SMB顧客はクレジットカードの支払いリストから可能な限り支払いをキャンセル。解約率が2倍になった。
- 顧客の10%程度が契約更新時に価格交渉を仕掛けてきた。
- 一方でエンタープライズ顧客ではほとんど全て契約更新ができた。
- アップセルの勢いが落ちた。
景気の下降局面において企業は予算の削減目標を掲げ、その目標は経営 – 事業部 – 各部門の責任者に降ろされます。そして、組織を運営する上で優先順位が低く効果が不明瞭と考えられるコストから削減対象となっていきます。自らがその対象にならないようにカスタマーサクセスが行うべきは、プロダクトのROIを認識して貰うことはもちろん、他コストと比べマインドシェアを高める施策を実施することが重要です。
予算削減による解約を防ぐには
顧客との関係性を深めタッチポイントを増やす
- プロダクトの導入担当者だけでなく決裁者とも関係性を作る仕組みを作りましょう。キックオフで必ず出席してもらうプロセスにしたり、特に契約金額の大きなアカウントや事例となっている顧客は1年に1度は会いに行くルールを作るなど。ときにはイベントやギフトなどの飛び道具でロイヤルティを高めることも顧客のマインドシェアを高める上で有効です。
- 単一部署でなく複数部署、現場だけでなく意思決定レイヤー、なるべく業務の基幹側に回れる機能を提供できるのが理想的です。会社にとってなくてはならないプロダクトになれていれば自ずと解約可能性が下がります。
契約開始から成果を出すまでのステージ管理と契約更新戦略を再整理する
- 契約開始から何のステップをクリアするまでがオンボーディングなのか、顧客が何を達成したら成功と言えるのか。各ステージごとに評価できる指標を可能な限り定量で定め、基準に満たない顧客を特定し丁寧にフォローアップしましょう。
- 四半期単位や半期に一度プロダクトの成果を両者で目線合わせするレビュー会を実施するのもよいでしょう。今発生しているか課題は何か、何を達成すれば良いか、契約更新までのマイルストーンを両者で認識合わせし課題解決に向けた動き出しを行うことで、不用意な解約を防ぐことができます。
プロダクトのロードマップを示し正しい期待感を醸成する
- たとえ今現在は満足のいくものでなかったとしても将来的には顧客の課題を解決できる能力があることを示すことが重要です。そのために、四半期単位で開発予定の機能リストを提示することができれば、期待感が醸成され契約更新に向け顧客の背中を押すことができるでしょう。(ただし、今までの機能開発がある程度期待通りに進捗していることが前提です。)
景気の状況に関わらず顧客にとって信頼できるパートナーであり続けるために、プロダクトを磨き関係性の発展に努めていきましょう。

HiCustomer株式会社 代表取締役
EPRベンダー、SaaSスタートアップへ投資支援を行う企業を経て2017年12月にHiCustomerを創業。国内初のカスタマーサクセス管理ツールをSaaS事業者向けに提供しています。