
新しい期が始まる4月からカスタマーサクセスに取り組み始めた、組織を立ち上げられた企業も多いのではないでしょうか。弊社HiCustomerでも、カスタマーサクセスの組織立ち上げ方法についてご相談をいただく事が多くなっています。
今回は新しくカスタマーサクセスの取り組みを始める時、教科書的に語られるタッチモデル、「ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ」について考えてみたいと思います。
最初から「ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ」の分類が必要?
カスタマーサクセスに関する文献の多くで「ハイ・ロー・テック」それぞれへのアクションについて触れられています。ということは、最初に必ずこの分類をする必要があるのでしょうか?端的に答えるとすると「NO」であると考えています。
カスタマーサクセスにおいて、タッチモデルで顧客を分類するのは、以下2点が主要な要因です。
・顧客のサービスに対する期待値を適切に管理し、過剰/過小なサービスを防止するため。
・LTV最大化を目的に限られた自社のリソースを適正に振り分けるため。
カスタマーサクセスに取り組み始めたタイミングでは、カスタマージャーニーが整理されておらず、顧客に関する情報(どんな時に、どんな状況で、どのように感じるのか)、顧客のインサイトが明確になっていない組織が多いと感じています。
まずは顧客に向き合い、顧客の状態変化をキャッチアップできる指標や、効果的なアクションを洗い出すことに注力していきましょう。初期フェーズでは、いわゆる「ハイタッチ」的なアプローチで顧客のインサイトを洗い出していく事が、遠回りのように見えて近道なのです。
どのような項目で顧客を分類する?
さて、顧客のインサイトが見えカスタマーサクセスを仕組み化する段階、管理すべき顧客数やカスタマーサクセスをスケールさせるため効率化を実現する段階になったら、タッチモデルの分類に取り掛かることになります。分類の際にどのような項目を考慮すべきか、以下に4つあげてみましょう。
Revenue(収入)
顧客分類を検討する際に、最も一般的な項目が「Revenue(収入)」です。サブスクリプションビジネスにおいて、より大きなARR(年間経常収益)を持つ顧客は本質的に価値があります。また、より高い金額を支払っている顧客は、恐らくより高いレベルのサービスを期待しています。しかし、大きな金額を支払っている顧客内部には、独自のサポート部門/人員がいる可能性もあり、この場合手厚いサービスを必要としない場合もあります。
Revenue Potential(将来の収入の伸び)
現在の収入が全てではありません。将来の潜在的な収入も考慮する必要があります。例えばトライアル期間中で金額が少なくても、トライアル終了後には大きなARRがもたらされる可能性を秘めている場合。上位の層に配置することを検討しても良いかもしれません。
Customer Expectations(顧客の期待)
ある顧客は、他の顧客よりも高いレベルのサービスを必要としている場合もあります。顧客を分類することのメリットの一つは、顧客の期待を適切に管理することです。顧客に向き合い、例えば業界・ユースケース・規模により期待値の差が出るのか、特性を洗い出すことで、適切なサービスを提供することができます。
Adovocacy(支持者/熱狂的ファン)
あなたの会社の支持者として行動してくれる顧客には、より感謝を示すべきです。新たな顧客を紹介してくれた場合、事例として掲載された場合、コミュニティで登壇してくれた場合など、より高い顧客層に配置することを検討しても良いでしょう。
「ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ」は単なる手法
上記の要素を考慮しながら顧客を分類する層を定義します。その後各層へのルールを整備していきますが、いわゆる「ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ」を、そのまま各層に当てはめてはいけません。層の下部に当たる顧客に対して、必ずテックタッチを適用しなくてはならない、そんな事はないのです。
カスタマーサクセスの形は、提供しているサービスや顧客特性により異なるものです。カスタマーサクセス活動の大前提は「顧客の成功」です。「ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ」はあくまで手段、自社サービスの特性を鑑み柔軟に適用させていきましょう。

2008年に株式会社インテリジェンス(現パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)入社。ITアウトソーソング部門にて複数のプロジェクトを経験後、マネジャーに着任。2017年からは新規事業開発部門にて、自社開発サービスの営業・カスタマーサクセスに従事。2018年に、自社カスタマーサクセス/カスタマーサクセスアウトソーシングサービスの立ち上げを実施。
2019年4月よりHiCustomer株式会社にて、セールス/マーケティングを担当。