顧客像が定義できれば正しく伴走できるーーベーシック塚本氏が語る継続率向上を実現するヘルススコア設計の極意

ヘルススコアで顧客の状態を可視化する、SaaS向けカスタマーサクセス管理ツール「HiCustomer」

2019年4月16日(火)、『カスタマーサクセスにおける『正しい顧客像』の作り方』と題したイベントを開催しました。すでにSaaS企業の間でカスタマーサクセスの概念は広く伝わり、その重要性は理解されています。しかし、実際に成果をあげるための具体的なノウハウやチームマネジメントの知見は未だに多くありません。HiCustomerのイベントでは、カスタマーサクセスによる事業成長に必要な要素をより掘り下げ、チームでの成果の向上を探求すべく、各社のカスタマサクセスマネージャーをお招きし、HiCustomer高橋とディスカッションを行います。

今回は、株式会社ベーシック カスタマーサクセス部カスタマーサクセスグループ マネージャー 塚本 雄介氏に「お客さまのペルソナ作り」と、そのペルソナ像をベースにした「KPI・ヘルススコア設計」についてお話いただきました。

ferret Oneのカスタマーサクセスチーム

ferret Oneは株式会社ベーシックが提供するWebマーケティングツールです。『分散したマーケティング環境を一つにまとめ、企業の成果とマーケターの生産性を高める』をコンセプトにしています。一口にWebマーケティングといっても、その領域は幅広く、サイト、ブログ、LPに、SNS…と扱わなくてはならないツールも様々です。マーケターはそれらを運用改善するために、それぞれの環境からデータを管理したり運用操作をしなければなりません。一方で成果は全体として評価しなければならず、Webマーケターにとって複雑で生産性の上がりづらい環境です。

それらの課題を解決し、Webマーケターをサポートするのがferret Oneです。Webマーケティングに必要な機能が包括され、ferret Oneを活用すればBtoBのリード獲得に向けたアクションが一元管理できます。さらに多くの外部サービスとの連携にも対応し拡張性にも優れています。

そんなferret Oneのカスタマーサクセス部は4チームで構成。オンボーディングなど導入初期を支援する『アカウントチーム』、カスタマーへの定期的なヒアリングやQ&Aの充実など活用中の支援を行う『カスタマーサクセスグループ』、クライアントのWebマーケの武器の一つであるサイト制作を請け負う『制作チーム』、クロスセルなど他のサービスの提供を行う『ソリューションチーム』です。拠点が宮崎と東京にあり、全26名のメンバーで組織されています。

※ベーシック カスタマーサクセス部門の紹介記事もあわせてご覧ください。

カスタマーのサクセスを追求したはずがチャーンを招いてしまった?!

ferret Oneでは2015年から『カスタマーサクセス』の名前を掲げてチームを立ち上げていたようですが、カスタマーサクセスの思想と仕組みが具体的に実務に落とし込まれたのはここ1年のことだと言います。塚本氏によれば、その歴史について塚本氏は3つに分けられるようです。

まずは「立ち上げ期」。当初は、まだプロダクト自体もリリースしたばかりであり、整備に追われる日々でしたが、後半にはセミナーを始めたほか、カスタマーサクセスらしいカスタマーの先回りをした動きを実行できるようになってきました。

その後、2017年〜2018年にわたる「やり方模索期」。この時期に様々なトライアンドエラーを繰り返したことが今のferret Oneのカスタマーサクセスチームに生かされています。この時期の当初に実行したことは、カスタマー毎に担当を割り振る『担当制』。当時の成果は“カスタマーの成果=顧客のビジネス目標に直結するサイト数値の改善”だと、カスタマーのサイトのPVや有効なお問い合わせ数を目標数値として追っていたと言います。

しかし、この時期を塚本氏はこう振り返ります。「担当がついてサイト数値を目標とすることで、担当が顧客にwebマーケティングのノウハウをメインに伝えることになり、プロダクトと別軸の価値提供を進めてしまいました。弊社の担当者が顧客にプロダクト利用を進めるのではなく、SEOキーワードの選定など業務を“代行”をしながらコンサルに近い役務を提供するような状況になってしまったのです。ある程度担当者からノウハウを得たカスタマーは卒業してしまうケースも…。この経験からプロダクトを利用してもらわなければ意味がないと改めて痛感し、体制と目標の見直しを行いました。」(塚本氏)

カスタマーのサクセスと自社プロダクトの共存する世界観を作ることの重要性を実感した塚本氏は、2018年に担当制を廃止し、目標数値もferret Oneの活用にひもづくプロセス指標を選ぶことに。しかし、ここでもある課題が発生してしまいます。「担当者を廃止し動画コンテンツでサポートをすることにしましたが、プロダクト自体が動画だけでは使いこなすことが難しく、今度は活用率が下がってしまいました。」(塚本氏)

カスタマーのサポートをしすぎると代行の形になってしまうし、動画などテックタッチのサポートに振り切ってしまうとプロダクトを使いこなすことができない。
この『やり方模索期』で経験したことを生かしたのが、2019年から今に繋がる『仕組み化期』です。オンボーディングを行うアカウントチームを組成し、各チームの対応方針を定めます。そして、ferret One導入後の状態を把握するためのツールとしてHiCustomerを導入しました。

顧客視点をもつための「ペルソナ」。作る際に重要なのは、考え方のステップ

仕組み化を推し進める中で、新しい課題が生まれます。社内で施策を検討する際に「どのように継続率をあげるか」「どれくらい活用されるべきなのか」と、議論が事業課題起点になってしまいがちなのです。

この課題について、多くのカスタマーサクセス担当者と伴走しているHiCustomer高橋曰く、よくある話なのだそう。例えばベーシックのKGIである継続率をあげるという目標に向かうと、使い続けさせることに意識が向きすぎてカスタマーサクセスの考え方とは離れてしまいます。この課題を解決するため、ferret Oneでは『ペルソナ』を設定することで、顧客目線を意識するようにしたと言います。

このペルソナを設定する際に大切なのが、考える順序です。

まず、定性的な顧客像を作ることが始めます。メンバーの肌感も頼りに、継続しているカスタマーはどんな組織・どんな業務に従事し、どんな属性を持っているのか探っていくのです。その後、当てはまるカスタマーに関する活用率など定量的な情報を調べていきます。ferret Oneでは、習熟度に応じてロイヤル、アクティブ、オンボードと3つの顧客像を作りました。また、ロイヤル、アクティブ、オンボードに当てはまるカスタマーのヘルススコアをそれぞれ、グッド、ノーマル、バッドとして管理することに。

ペルソナの作り方のポイントとして高橋が以下のように補足します。

「ポイントとしては、『●回利用した人をロイヤルカスタマーとする』という決め方でなく、『ロイヤルカスタマーとはどんな人だろう』と仮説を立て、彼らがどのように活用してるか見ていったことでしょう。数字からペルソナを定義するのではなく、ペルソナを数字で表現することができたのが良かったのだと感じました。」(高橋)

ペルソナを作るというゴールは同じでも、顧客像から考えるか、数字から考えるかにより、顧客起点を実行できているかが変わってくるのです。

ペルソナを作ることができたら、それを生かしたアクションに落とし込みます。ferret Oneの場合、ロイヤルとアクティブのカスタマーを比較すると、ロイヤルカスタマーはツール内のレポート機能を活用しサイトのアクセス解析を行い、施策の振り返りが行われていることが分かりました。そのため、アクティブカスタマーをロイヤルカスタマー化するために「レポート機能の説明をする」というアクション例があげることができます。

同様の考え方でオンボードカスタマー、ロイヤルカスタマーについても、必要なアクションの洗い出していきます。このようにペルソナに応じたアクションを明確にすることによって、ferret Oneのように東京と宮崎でチームが物理的に離れている組織でも、同じ水準でカスタマーサクセスのアクションを実行することができます。

ペルソナの設定によりカスタマー起点での施策を整理することができました。現在はこれらの施策をサクセスプログラムとして落とし込み、今後のスコアや状態の変遷を確認していく予定だといます。

カスタマーサクセス業務に紐づく情報が適切に管理されていることが生産性の高いチームを作る

カスタマーサクセスの成功には、情報を正しく管理できている状況が欠かせません。カスタマーの状態、担当者のアクション、そしてその成果としてのヘルススコア−−様々な情報を適切に管理されていることが、筋の良い仮説とスピーディーで適切な判断を生み出すといっても過言ではありません。

Googleスプレッドシートやあらゆるツールの管理画面を使って管理する企業もありますが、ferret OneではHiCustomerで一元管理しています。
まずは、定期的な活用ヒアリングの質を向上させるために必要となる、タイムリーな顧客状況の管理。ヒアリングの場で「最近どうですか?」と手探りのコンサルティングを行うより、事前にカスタマーの状態を把握しておき、サクセスに繋がる具体的な提案をできた方が双方にとって有益です。こうした上質な顧客へのハイタッチサポートのためにHiCustomerを活用しているのです。

例えば、HiCustomerを使うと対象のカスタマーの直近の活用履歴をグラフで視覚的に確認できるため、ヒアリングの前に「この機能を使いこなせていなそうだから、ご説明した方がいいだろう」など仮説を立てて臨むことができます。続いて、アクションとその成果の振り返りについてです。どんなカスタマーにどのような施策を実行し、結果はどうだったのか。この情報は重要であるものの、継続的に状況をトラッキングをしていくことは簡単ではありません。

ferret OneではHiCustomerのタグ付け機能を使い、アクション内容によってタグを発行。あるアクションを実行したカスタマーにタグを付け、一覧で管理をしています。これによりアクション毎のタグで絞った一覧を確認するだけで前後のカスタマーの状態の変化を簡単に確認でき、アクションに関するノウハウを貯め続けるこができます。

最後に、ヘルススコアの管理。ferret Oneではヘルススコアの構成比を目標としています。もちろんヘルススコアの管理もHiCustomerによって可能です。目標としての、ヘルススコアの構成比の利点を塚本氏は次のように解説します。

「カスタマーサクセスのKGIは継続率です。ヘルススコアはその先行指標として有効だと思っています。ferret Oneでは、ヘルススコアによって想定継続率を設定しています。そのため、各ヘルススコアのカスタマーの構成比から最終的な継続率の見込みを立てることができるのです。」

KGIである継続率と、メンバーの日々のアクションとは紐付けることに苦難するカスタマーサクセスマネージャーは少なくないでしょう。想定継続率とヘルススコアの構成比による目標管理は、KGIから考える目標設定の一つのアイディアとして優秀です。

試行錯誤を繰り返しながらも着実な成長を続けてきたferret Oneのカスタマーサクセスチーム。ディスカッションの最後、塚本氏は「今後は、より再現性のある仕組みを作り上げ、スケールしたい」と意気込んでいました。カスタマーサクセスを立ち上げた組織が打ち当たる課題の一つが『カスタマーサクセスになりきれないこと』。顧客の理解無くして、顧客の成功はありません。具体的な顧客理解に、ペルソナの設定は大きく貢献するでしょう。 (文:萩原愛梨 編集:高橋 歩)

次回勉強会のお知らせ

次回は2019年5月14日(火)より、Wovn Technologies様に「カスタマーサポートから「カスタマーサクセス」への組織変革」についてお話頂きます。イベントページはこちら