時短ママでも成果の出せるチームを作るーーEmotion Tech 飯野氏が語る、多様性と再現性を両立するカスタマーサクセスプロセスの磨き方

2019年3月12日、HiCustomerにて『個人からチームへ、再現性を作るカスタマーサクセスプロセスの磨き方』と題したイベントを開催しました。新しい概念であるカスタマーサクセスを真の意味で価値のあるものにしていくために欠かせないのが“チーム作り”の観点です。HiCustomerでは複数回に渡り、現場で活躍中のカスタマーサクセスマネージャーをお招きするイベントを開催。皆さんが試行錯誤した生の経験から、カスタマーサクセスチーム作りのキーポイントを探ります。

今回は、HiCustomer高橋をモデレーターに、株式会社Emotion Techカスタマーサクセス部 部長 飯野 峰逸氏をお招きしお話を伺いました。

EmotionTechのカスタマーサクセスチーム作り

飯野氏がカスタマーサクセスを担うEmotionTech は、NPS®をはじめとした感情データを基に、顧客体験マネジメント(CXM)を行うためのクラウドサービス。NPS®とはネット・プロモーター・スコア®の略であり、推奨度によって顧客ロイヤリティを数値化したもの。EmotionTechの特徴は、何が要因になって推奨度の向上や減少が起こったかが可視化される点です。まずカスタマージャーニーを設計し、いくつかの体験毎にNPS®を計測し、ギャップが大きく出てしまう体験が改善ポイントとなります。

以前のEmotion Techのサービスは、顧客体験マネジメント(CXM)に関するコンサルティング・CXM支援サービスの一環として提供されてきました。そのため、ユーザーがプロダクトを使いこなすには、ユーザーの理解を得ていく必要があったほか、プロダクト自身にもまだまだ課題が多くありました。しかし、2018年にリニューアルが行われ、プロダクトが使いやすくなったことで、クラウドサービスとしてのEmotionTechが、同年6月に新規事業として立ち上がります。当時飯野氏は入社間もないタイミングでありながら、クラウドサービスとして生まれ変わったEmotionTechのカスタマーサクセスの立ち上げを担うことになりました。

既存事業であるコンサルティング・CXM支援サービスのカスタマーサクセスはNPS®調査の設問設計から実行・分析、レポーティングまで行い、いわばカスタマーの「代走」によって顧客を成功へ導いていました。しかし、クラウドサービスとして成立させるには、カスタマー自身でプロダクトを使いこなして実行・分析・改善を回していける形が理想的。そのため、飯野氏は新規事業であるクラウドサービスとしてのEmotionTechのカスタマーサクセスを立ち上げるにあたって、カスタマーに考え方や活用方法をレクチャーする「伴走」スタイルへ舵を切りました。飯野氏がチーム作りを行う過程で大切にした3点を紹介していきます。

プロダクトの世界観で”熱意のギャップ”を埋める

サービスの導入を決めたクライアントの役員や部長クラスと、実際の運用を行う現場担当者との間に熱意のギャップがあることに悩んだカスタマーサクセス担当者は少なくないはず。同様の問題に直面した飯野氏が、課題解決のために注力したことが「プロダクトのある世界観を示す」こと。カスタマーの現場担当者は、「なぜ導入を決めたのか」「導入するとどんなメリットがあるのか」「導入の成果が出るにはどれくらい期間が掛かるのか」を理解していない場合もあり、そうなるとプロダクトを活用するモチベーションも下がります。

「EmotionTechの最大価値である分析結果を見せるまでに、導入から2ヶ月掛かってしまいます。だからこそプロダクトのある世界観を示すことが非常に重要です。今このプロダクトを使うことでどんな情報が手に入り、それを分析し、改善するとどんな成果が得られるのかを、示し続けなくてはいけません。それは、カスタマーサクセスだけでなく、マーケティングや営業の部署とも連携し、会社全体で実行すべきことです。」

高橋からも「決裁者と現場の方では、見ている世界や目指しているゴールが違います。カスタマーに世界観を示す際は、それぞれの方のポジションやその方が持っている課題感や興味、プロダクトに期待していることなどを理解した上で、伝え方を工夫すると良さそうですね。」といった補足がありました。

ときには自らお店に足を運び、カスタマーになりきる

せっかく収集したデータも分析や今後の改善に活かせるものでなければ意味をなしません。有効なデータを収集するには設問設計が重要です。その設問設計に必要なのが「カスタマージャーニー」です。EmotionTechはアパレルに住宅ローン、ロボットアーム製造会社まで、多種多様な業界・企業で活用されています。そして、調査の設問に答えるのは、これらの企業のカスタマー、つまりエンドユーザーです。

「EmotionTechにおいてエンドユーザーを対象としたカスタマージャーニーの設定はとても重要です。カスタマーの業種は多岐に渡ります。しかしこの重要なポイントで”私たちは分からないので、やってくださいね”と任せっきりにはできません。精度の高いカスタマージャーニーの設計を支援するため、私たちはカスタマーのサービスを深く理解し、さらにカスタマーが対峙するエンドユーザーになりきります。この過程で実際のお店に自ら足を運んでカスタマーのサービスを受けることもあります。」

EmotionTechの最大価値である収集データが有効なものになるかどうかは、調査の設問設計に掛かっているといっても過言ではありません。だからこそ、導入後1ヶ月を設問設計に費やすこともあるそう。この設問設計をより良いものにするためには、カスタマーをサポートするだけではなく、エンドユーザー、つまり「カスタマーのカスタマー」になりきることが大切なのです。

メンバーにより品質がブレないよう、プロセスを磨く

クラウドサービスとしてのEmotionTechにとって必要なカスタマーサクセスを立ち上げていた飯野氏。これまで紹介したような「プロダクトの世界観を示す」「カスタマーになりきる」など、カスタマーサクセスにとって重要な指針を示してきました。しかし、一人で感覚的にプロセス作りをしてきたからこそ、今後チームを構築するにあたり「再現性」を作る必要性が出てきました。そこで飯野氏自身がこれまでやって行ってきたカスタマーサクセスのプロセスを洗い出し、明確化していきました。「プロセスを磨く」段階です。

「まずは複数の案件を伴走支援した経験からスケジュールやタスクを整理し、一連の流れをフェーズ分け。そのフェーズの中にどういった作業があるかを洗い出します。そして、どこが重要なポイントであるのかを、マーケ・営業のプロセスも紐づけて定義していきました。」この重要なポイントを探る際、飯野氏はエンジニアであった経験を生かし、シーケンス図を描いて一連の流れを可視化したそうです。これによりアクションとしては再現性のある状態を作ることができます。

「担当するカスタマーサクセスメンバーによってサービスの品質がぶれることはクラウドサービスにあってはならないことです。再現性を持ち、かつサービスの品質を一定にするには、カスタマーの状態を正確に定義する必要があるため、ステージによる顧客分類とヘルススコアを設計し、運用をはじめました。」

このステージングとヘルススコアの可視化・管理のためのツールとしてHiCustomerを採用していただいています。EmotionTechの利用フローには調査準備や実査、分析などのフェーズがあります。HiCustomerによって、カスタマーが作業を進めたり、戻ったりすることを顧客ステージ情報としてリアルタイムに把握できるようになりました。

そのためステージが進んだカスタマーにはスピーディーに推進していき、逆にステージが戻ってしまった場合は何らかのトラブルが考えられるため早急にサポートすることが出来ます。飯野氏からは「お客さまから質問や相談を受ける前に手を打つことが出来るようになった」と導入実感を語っていただきました。

再現性の高いEmotion Techのカスタマーサクセスチームには、”ある特徴”があります。それは働き方の多様性を積極的に受け入れること。「メンバーよってサービスの品質がブレてはいけない。」と語る飯野氏は、どんな働き方のメンバーがいても同質のサービスが提供できるチームであるべきだと考えています。

そのため、現在のチームは9名中3名が時短ママ。今後も時短ママをはじめとしたさまざまな働き方を目指す方を採用していくよう。”再現性”のあるプロセスを磨くことで効率的・効果的な活動ができれば、さらに新しいチャレンジをすることも出来るようになります。”再現性”のあるプロセス作りは、成果をあげることだけではなく、カスタマーサクセスチームの多様性を生み出すための方法として、新たな可能性をもたらすかもしれません。(文:萩原愛梨 編集:高橋 歩)

注: ネット・プロモーター® 、ネット・プロモーター・システム® 、ネット・プロモーター・スコア®及び、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

次回勉強会のお知らせ

次回は2019年4月16日(火)より、ベーシック様に「カスタマーサクセスにおける『正しい顧客像』の作り方 〜チームで顧客を成功に導くペルソナ作りとKPI設定〜」についてお話頂きます。イベントページはこちら

ヘルススコアで顧客の状態を可視化する、SaaS向けカスタマーサクセス管理ツール「HiCustomer」