顧客を孤独にさせないことがカスタマーサクセスの秘訣ーースタディプラス角田氏が語る顧客コミュニケーション戦略



ヘルススコアで顧客の状態を可視化する、SaaS向けカスタマーサクセス管理ツール「HiCustomer」

2019年6月11日(火)、『顧客を導くコミュニケーション設計とチーム⽬標の作り⽅』と題したイベントを開催しました。

すでにSaaS企業の間でカスタマーサクセスの概念は広く伝わり、その重要性は理解されています。しかし、実際に成果をあげるための具体的なノウハウやチームマネジメントの知見は未だに多くありません。HiCustomerのイベントでは、カスタマーサクセスによる事業成長に必要な要素をより掘り下げ、チームでの成果の向上を探求すべく、各社のカスタマサクセスマネージャーをお招きし、HiCustomer高橋とディスカッションを行います。

今回は、スタディプラス株式会社 ForSchool事業部 CXプランニンググループ グループリーダー角田 典子氏に、カスタマーである塾講師たちを”孤独にさせないサポート”でサクセスに導いた、そのコミュニケーションのノウハウやチーム作りについてお話いただきました。

変わっていく塾の形と、講師の業務内容。その進化を支えるStudyplus for school

スタディプラス株式会社では、⽣徒向けサービスである、学習管理機能や生徒同士のSNS機能を搭載したStudyplusと、塾講師向けサービスである、⽣徒の学習管理機能や⽣徒とのコミュニケーション機能を搭載したStudyplus for schoolを提供しています。

今回は、角田氏にStudyplus for schoolのカスタマーサクセスについて語っていただきました。Studyplus for schoolのカスタマーの多くは塾の講師です。実は、ここ数年で学習塾のモデルは様変わりしており、それに伴って塾講師の業務内容も大きく変わっています。

従来の塾といえば、集団学習がメイン。教室に複数の生徒が集まり、講師から直接授業を受けることで学習を深めます。講師の主たる業務は、この授業であり、生徒の学習進行度を測ることは付属的な業務でした。その後、塾の形は集団学習から個別学習のモデルへ変化し、講師が対する生徒は複数から1人になりますが、業務内容に大きな変化はありません。

しかし、現在新しい形として増えてきているのが、⾃⽴学習塾モデル。生徒は塾に着くと、タブレットの前に座りビデオ教材を見ながら学習を進めます。対面による授業のないモデルでは、講師の業務内容が大きく変わります。生徒の学習がきちんと進んでいるかを管理することが主な業務となり、学習指導はデジタル教材と組み合わせて行う付属的な業務となります。

つまり、⾃⽴学習塾モデルでは、生徒は個々のスピードに合わせて学習ができ、塾は人手不足を解決でき効率的に生徒の学習支援を行えるというメリットがあります。そのため現在、集団指導塾モデルや個別指導塾モデルである塾も自立指導型に転換しようとする動きがあります。

そうした業界の変化がある中、講師の新しい仕事となった「生徒の学習管理」を支援するのがStudyplus for school。塾の講師はStudyplus for schoolを使うことで、生徒の学習履歴がリアルタイムで確認できるため、面談を行うことなく生徒の現状を把握することができます。

オンボーディング期間での密なコミュニケーションが「孤独にさせない好循環」を生む

Studyplus for schoolでカスタマーサクセスを担うのは、CXプランニンググループに所属する4名。それぞれ大手、中小、個人など規模に応じて担当し、1人あたり100校程度を支援しているんだとか。

カスタマーサクセスを担当するメンバーの多くが教育に携わった経験があることも特徴の一つ。角田氏も大学時代に東京個別指導学院で講師を務めたことから教育事業に興味を持った経緯があり、高校講師からキャリアチェンジをした方もいるようです。

そんなStudyplus for schoolのCXプランニンググループでは、『先⽣を孤独にさせないサポート』をテーマに掲げています。その理由について角田氏は次のように語ります。

「従来型の塾にとってStudyplus for schoolの導入は、つまり自立学習塾へのモデルチェンジなので、講師たちにとって業務変更を伴います。講師たちも変化の必要性は感じつつも、実際に実行をするとなると、かなり大変です。

ここで重要になるのが、導入に向けたテンションが高い状態を維持すること。私たちCXプランニンググループでは、オンボーディングの段階でコニュニケーション回数を増やし、顧客に伴走しながら成功イメージを常に伝え続けます。

コミュニケーション回数が多いことで事例が集まりやすくなり、それをまたカスタマーに展開することができるので、孤独にさせない好循環が回り始めます。」

接触回数が重要とはいえ、忙しい塾の講師にとってオンラインミーティングなどの同期コミュニケーションは負荷になります。そのため、気軽さを兼ね備えたSNSを活用したチャットによる非同期コミュニケーションを採用。最低週に一度は、カスタマーとコンタクトをとっているといいます。

成功イメージを具体化するサポートがStudyplus for Schoolのカスタマーサクセスの強み


具体的なオンボーディングのフローには、3つのステップがあり、これによってサクセスを妨げる2つの壁を乗り越えさせています。壁の一つは、どう運用して行けば良いか分からず離脱してしまう「初動の壁」。もう一つは、運用が大変だと製品や機能が悪いと判断されてしまう「継続の壁」です。

まず初動の壁を乗り越えさせるステップが、製品の理解促進と業務の理解促進の2つ。このステップで重要な役割を果たしているのが「ビジョンブック」です。全編50ページにも登るビジョンブックは、全国のモデル校の事例をまとめたもので、塾のオペレーションに必要な情報を網羅しているといいます。その充実っぷりには高橋も「これがあれば塾が運営できるのでは」と驚くほど。ビジョンブックに対するこだわりを角田氏は次のように語ります。

「カスタマーの成功は、Studyplus for Schoolを使いこなすことではなく、自立学習型塾を成功させることです。そのため、Studyplus for Schoolを使う面では関係ないような、教室のレイアウト例や生徒とのコミュニケーションの取り方についてもまとめています。これを作る過程では、実際に成功事例となる塾の面談に同席させてもらうなど、生きた情報を反映しました。」

続いて継続の壁を突破するために取り組んでいるのが、成功イメージの醸成。これを実現するために、週に一度はカスタマーとコンタクトをとっています。

しかし、カスタマーと毎週コンタクトを取るためには、成功イメージを醸成するためのStudyplus for School活用アイディアや、成功事例を用意しなければなりません。この課題にも、毎週カスタマーとコンタクトを取ることで解決することができました。

具体的には、大きく4つ施策が運用されています。

一つ目は、カスタマーとコンタクトを取ったときに聞いた活用アイディアや事例を、Twitter やnote記事にまとめること。
二つ目に、導入校のみ参加できるオンラインサロン「スタプラ会議室」 。ここでカスタマーサクセスメンバーだけでなく導入校同士のコミュニケーションが生まれ、リアルなイメージが湧きやすくなります。
三つ目が、Studyplus for Schoolの活用状況をまとめたカスタマーレポート。まるで通知表のように、他の導入校と比べてどれほど活用できているかも分かるものです。
最後に、カスタマー同士をつなげるリアルな交流会イベント「Counter Night」 です。

特出すべきは、施策の一つ目にあげたTwitterの配信。なんと全てのカスタマーサクセスメンバーが、その日に見聞きしたアイディアや事例を毎日必ずTwitterに投稿しています。さらに、メンバーそれそれがTwitterでの1週間分の投稿をnoteにまとめて配信。この流れを作ることで多くのコンテンツを生み出すことができるため、さらに成功イメージの醸成がしやすくなりました。

このような毎週カスタマーとコンタクトを取るという施策は、事例を短期間で量産することができる施策ではあるものの、メンバーへの負担も大きくなります。そのため、当初はメンバーからも運用できるかどうか心配する声もあったようですが、継続していく中でTwitterやnoteをみたカスタマーの反応が増えるにつれ、そうした声も減っていったと言います。

また、この施策について高橋は「アウトプットの機会が設けられていることによって、顧客とコミュニケーションの度に『これは事例になるか』と意識するようになるので、メンバーのスキルアップにも繋がる」と評価していました。

KPIはHiCustomerを活用し、可視化。コミュニケーションのタイミングを見逃さない


こだわり抜いたビジョンブックと、SNSを駆使した事例の共有により、カスタマーを成功へと導くStudyplus for SchoolCXプランニンググループ。KPI管理を効率的に行うために、HiCustomerを活用しています。
具体的にKPIとして管理しているものは、運用KPIとして必須オペレーションの実行、接触KPIとして週に1度のコンタクトなどがあります。

運用KPIは、 講師が行うべきStudyplus for Schoolのオペレーションを9項目で評価。そこでツールが適切に活用されているかを判断しますが、HiCustomerの管理画面上で活用状況を可視化しています。

また、接触KPIにおいては、週一度のコンタクトを達成するため、接触すべき顧客がいる場合にはHiCustomerから自動でアラートが上がるように設定されています。

Studyplus for Schoolでは、密なコミュニケーションによって、カスタマーとの強固な信頼関係を構築するだけでなく、そこから大量にリアリティのある事例を収集することができています。「今後はこれまで個人の元に集まった小さなTipsを体系化し、チーム全体の提案の質を標準化、向上させていく」と角田氏は展望を語りました。

サービスを提供している企業では「このサービスは、このように使われるべきである」「このように使えば成果がでる」と想定したプロセスにこだわり、当てはめようとしてしまうケースもあるのではないでしょうか。
カスタマーの中から成功事例を見つけ出し、それをカスタマーに伝えることで成功まで伴走するStudyplus for Schoolのカスタマーサクセス。これこそサービス提供側とカスタマーの連携により共に成長し、カスタマーのサクセスを追求していくための一つの姿といえるでしょう。
(文:萩原愛梨 編集:高橋 歩)